大人の芸術講座 06


美の魔法について

 

今日は、大それたことを考えてみました。

 

 絵を描くときに、作家というのは、自分の立場を自分以外の作家との違いとして、確立することに努めようとするものです。それが、絵を描くことの一番大事なことのように。

 

 個性的なアイデアや描き方を獲得したものは、周囲からも多大な評価を得ますから、多くの作家は、まずそのことに躍起になるように思われます。

 

 一方で、芸術には、美にまつわる問題があります。美は本来、作家が見つけようとしているアイデアや描き方とは、次元の違う問題のように私は思います。新しい芸術はそもそも、すでに美を求める必要もないという考え方もあります。

けれども、もし本当にそれで良いのだとすれば、それはもう人間が芸術を必要としなくなりかけている兆候なのではないかと、私には思えてなりません。

 

 この合理性こそ万能だとみなす現代にあって、美ほど神秘性があり難解なものはありません。芸術家はそれを捨てるべきではありません。

 

 これまでの無数の芸術作品をみても、美的なるものを創造し得たものが、どれほど数少ないかを考えてもわかると思います。新しいアイデアや描き方は、場合によっては、1分もあれば思いつくかも知れません。けれども美は、無限にちかい色数と形を無限の組み合わせで、キャンバスに組立て、そのうちの数組がやっと美に到達できるような、気の遠くなるような作業を我慢強く行えるものだけが、見つけることを許されるようなもののように思われます。