大人の芸術講座 02


カルチャー教室向け技法編

 

デジタル派とアナログ派

   

 

 今やデジタル全盛時代。あらゆるものが、0か1。その2つの数字の組み合わせによって表わされてしまう世の中。暖かみがない、あいまいさがない、柔らかみもない。私たちは、もう選択の余地のないままに、好き嫌いに関係なく、嫌でもそれを使わなければ済まなくなっていますが、それでも、「わしは死ぬまでアナログ派じゃ!」と、時代に流されずに頑張っておられる方も中にはおられるでしょうし、「携帯やパソコン、今の時代にはついていけんわい!」と言う方も結構多いでしょう。(実は僕もその一人で、この文章は手書きで書いたものを代理人が入力しています。)

 

 さて、本題に入りましょう。水彩画を描くというと、皆さんアナログ派の代表みたいに思われるかもしれませんが、実はその描き方においても、先程の「デジタル」と「アナログ」という分類ができるように思うのです。今からそれぞれの特徴を説明していきますので、あなたはどっちのタイプに当てはまるか考えてくださいね。

図1 デジタル的画法 制作過程 
図1 デジタル的画法 制作過程 

 まずはデジタル派とは? デジタルが0と1の2つの記号によって成り立つように、絵のデジタル派は、「明」と「暗」の2つの階調の組み合わせで、絵を描いていくことを基本とします。図1と図2は、デジタル派の絵の進行状況です。ちなみに、図3と図4は、アナログ派の描き方です。2つの派は、図1と図3の途中段階で描き進め方に、はっきり違いが見て取れると思います。

 デジタル派は、家を描こうとか、木を描こうとか、道路を描こうとか言うように、具体的なもの

図2 デジタル画法 完成
図2 デジタル画法 完成

を説明しようとしているのではなくて、「明」と「暗」の色面に分割しようとしているのです。風景全体を見渡し、全体の色を比べながら、ここは明るいグループ、そこは暗いグループと、明暗で分析していきます。 そうすると、このやり方だと、明るいグループには塗り残しておいて、暗い色のグループを先に塗っていくようになります。

 皆さんからの質問で、明るい色を先に塗るのか、それとも暗い方かと言う疑問の声をよく聞くのですが、暗い方から塗ると言うのは、このデジ

図3 アナログ的画法 制作過程
図3 アナログ的画法 制作過程

デジタル派的な発から端を発しているものだと考えたらよいと思います。  

 

 一方、アナログ派の捉え方は実に素朴です。アナログ派は、風景の中に何があるか、そこにあるものをひたすら描くのみです。家があればその家の特徴をまず表わします。瓦屋根の質感もしっかり描きます。電柱があれば電柱も描きます。木も出来る限り1つ1つ、そして幹も見えれば幹から描いていきます。

図4 アナログ的画法 完成
図4 アナログ的画法 完成

 けれども、図3を見るとわかるように、アナログ派の弱点は、「もの」と「もの」との隙間が後回しにされてしまうことです。隙間というのは、何だか解りにくく、「もの」のようであり、そうではないようでもあり、いずれにせよ解りにくい訳だから、後で塗ろうと言うことになります。 そのため、途中の段階では個々の「もの」は、1つ1つ描けてはいるのですが、風景全体としては、まだ自然な雰囲気がつかめないままです。

 

 それに対してデジタル派は、むしろ「もの」と「もの」との隙間から先に色が入っていくような手順になっています。「もの」自体を描くことには、こだわりを持っていないのですから、当然と言えば当然です。そして、隙間は影になっていることが多いのでだいたいの所が暗い。

その暗いところを塗って、家などの「もの」を浮き上がらせる。「もの」と隙間との距離感が生まれる、と言う仕組みです。

 

 では、アナログ派はと言うと、隙間が後回しとなるので、周りとの関係が築きにくく、つながりも弱いので、遠近感も乏しくなりやすい。そのよい例として、背景の杉の木の幹は、あまり明るい色ではありませんが、奥深い森のような所なので、幹の色よりも隙間の方が実際は暗い。デジタル派では、暗い方を先に塗りますから、幹より隙間を先に暗く塗ります。けれども、アナログ派は木を描くことが優先ですから、幹の茶色を先ず塗ります。そして、後から隙間を塗りますが、先に幹を塗るとどうしても幹を濃く塗ってしまうものですから、隙間をそれよりも暗くしにくくなる。そうこうしているうちに、正常な明暗の関係が表現できなくなってしまうと言うのが、アナログ派の間違いやすい箇所なのです。

 

 こうして見ると、アナログ派の描き方ではダメなの?と言うことになってしまいそうですが、それはそれでいい面もあるんだと思います。それに、図2と図4の完成図を比べても、そんなにデジタル派が劣っているとは思いません。いろんな描き方があっていいのです。ただ、繰り返しになりますが、アナログ式描法には、風景のつながりが希薄になるという欠点がありますから、そこだけをしっかり押さえておけば、暖かみのある素朴な味わいのある絵にきっとなると思います。

 

 さて、皆さんは結局、どちらの派だと思いましたか?


吉村宗浩ウヱブサイト